2016/03/08

Mo 02 セイダ・ニーンで小休止

 永遠に惚けているわけにはいかないため、私はセイダ・ニーンの町の方へ向き直った。
 目に入るのは数人の人々と帝国兵。頼れる人もおらず、隊長に奨められもしたため、まずアリーレのトレードハウスとやらを探そう。そう思って歩き出した矢先に、体に軽い衝撃を感じた。ドンとぶつかられ、バランスを保てず尻餅をついてしまう。
「ああっ、ごめんよ」



 返事がなかったためウッドエルフの男は焦っているようだけど、怒っているわけではない。逮捕され、監禁生活が長く続いたために筋力が落ち、小柄なウッドエルフにぶつかられただけで体勢を崩してしまった自分が余りにも情けなく、立ち上がることも言葉を発することもできなかっただけだ。
 ゆっくりと立ち上がり、服についた埃を払う。ぶつかってきたのは金髪のウッドエルフの男だった。ウッドエルフらしく背の低い、どこかおどおどした雰囲気のある男に平謝りされたため、逆に私は困惑した。私は表情が変わらないから、相当気分を害していると勘違いされているのかもしれない。
「別に、怪我をしたわけじゃないし、私も前をよく見ていなかったから」
「そ、そうかい。俺も探し物をしていて周りを見ていなかったんだ。ところで、あんたはさっきの船から降りた人じゃないかい? こんな時間に船が着くなんて珍妙だなあ。インペリアルどもに変なことをされなかったかい? やつら、俺の指輪を奪いやがったんだ」
 話している内に熱が入ってきたらしい。ウッドエルフの口調が早くなっていく。
「衛兵の一人が持ってるんだ間違いないよ。先週、奴らが毎週恒例の『ファーゴス(Fargoth)のものは俺達のもの』をやる前にはあったんだから。浮き彫りの入った治癒の指輪で、家宝なんだよ。なぁほんとに見てないか?」
 心当たりは大いにあった。家宝か。
「見かけたかも」
「わお! どこで!?」
「事務所の建物の側にそれらしい物を見た気がする。もう一度見てみる」
「どこ! どこなんだい!」
「えーっと……あそこの壁辺りだったかしら」
 事務所の向かいにあった倉庫らしき建物を指差すと、ウッドエルフはそこへすっ飛んで行った。私はウッドエルフに背を向けて事務所の壁沿いにしゃがみこみ、地面を探すふりをしながら左手から指輪を外す。
「ああ、こっちにあった」
「ほんとかい!?」
 声に反応して駆け寄ってきたファーゴスに、指輪を投げ渡した。慌てて手を伸ばしたウッドエルフは、体勢を崩しかけつつも指輪をキャッチした。
「これだ! すごいや! ありがとう! きみはとても良い人だね。みんなにも教えておくよ、友達のアリーレ(Arrille)にも。アリーレはここでトレードハウスを営んでるんだ」
「あら。私、そのトレードハウスに行きたいのだけど、どこにあるのか教えてくれない?」
「もちろんいいとも! こっちさ! 何でか知らないけど入り口が道とは反対側にあって、初めてのやつには分かりづらいんだ」




 ファーゴスの先導により、楽々とトレードハウスに到達することができた。入ってまず目に入ったのは、カウンターの奥に立っていたハイエルフの男。カウンターや壁際の机には、売り物だと思われる雑多な品物が秩序を保って並べられている。
「やあ、いらっしゃい。おや、そちらのご婦人はどなたかな?」
「聞いてくれよアリーレ、探していた指輪がやっと見つかったんだ。これも全部この人のおかげさ! 彼女が見つけてくれたんだ! 感謝してもしきれないよ。くそったれな衛兵どもとは大違いさ。ああ、そうだ! 奴らに二度と取られないように隠しとかなくちゃ!」
 うるさく捲し立てたと思ったら、ウッドエルフはあれよあれよという間に走り去っていった。
「あー……ファーゴスが世話になったようだね。私からも礼を言わせてほしい。ありがとう」
 唐突に去っていった友人にやや呆れている様子ながらも、店主は私に礼を述べた。
「ただ落とし物を見つけてあげただけ」
「さて、私の店に何の用かな。初めて見る顔だけど、一旗揚げるためにヴァーデンフェル島へやって来た移民の方かな?」
「そんなところ。細々とした物を揃えたいんだけど、商品を見せてもらってもいいかしら」
「もちろん。好きなだけ見ていってくれ」
 実は、この店に入ってからずっと気になっていた品があった。壁に立てかけて展示されている銀製の杖。そそられるが、しかし――。
「この杖はいくらかしら?」
「お目が高いね。その銀の杖なら56ゴールドだ」
 やはり高い。買えないことはないが、持ち金の大半を使い切ってしまうことになるため、諦めることにした。
 これから何が起こるのかは分からない。よって、まずは武器が必要だ。予算の範囲内で馴染みそうな武器はないかと見回すと、鉄製の戦鎚があった。持ち上げて振ってみる。重さも程良い。片手で振り回すための鈍器も売っているが、私は両手武器の方が好みだ。これにしよう。防具も買いたいところだが、金が足りない。
 服も新調したいけど、今着ている服は穴が空いているわけではないので、節約のためにまだ着続けることにしよう。しかし見た目が悪いので、服の上に羽織れるローブは購入する。今は収穫の月16日。夏の終わりとはいえヴァーデンフェルのこの辺りはまだやや暑いため、薄い生地のものを選ぶことにする。
 あとは諸々の道具を入れておくための背負い袋。それから、自身の記憶力に全幅の信頼を置いているわけではないため、白紙の本と筆記具も。
 本格的に旅をするのならまだまだ多くの用意が必要だが、万全を期そうとすると有り金全部を出しても足りない。会計を頼むと、店主は数ゴールド値引いてくれた。あのウッドエルフを助けてくれたお礼だという。厚意を素直に受け入れることにした。
「ご購入ありがとうございます」
「質問なのだけど、エローネという方はどこにいるのかしら?」
「ああ、彼女なら上の酒場だ。何か用かい?」
「ちょっと、バルモラへの道のことを尋ねようと思って」
「なるほど。ここら辺の土地のことならエローネが一番よく知っているからね」
「では、上に行かせてもらう」
「ああ、どうぞごゆっくり」




* * * * * * * * * *



【ヴェナサの手記】

第3期427年収穫の月16日

 やっとノートと筆記具を手に入れ、ゆっくりと座り一息つくことができた。
 忘れようと思っても忘れられないだろうが、これまでの経緯を簡単にまとめてみることにする。

 私は帝都で逮捕され、しばらく帝都の監獄に収容された後、輸送され、ここモロウウィンドのセイダ・ニーンにて釈放された。

 船では降りる直前に男の囚人と同室にされた。乱暴をされるかと思ったが、彼は紳士的に振舞い、私を気遣ってくれた。それなのにまともに礼も言えていない。彼はジウブという名のダークエルフだ。忘れないようにしよう。

 そういえば、ジウブにモロウウィンドに到着したと起こされる前、不思議な夢を見ていた気がする。
 女性の声が聞こえたような。何と言っていたか。思い出せない。まあいいか。それより重要なことがある。

 私は皇帝の命により釈放された。そしてこの指示書だ。

 読み返してみても、やはり訳が分からない。なぜ私なんかが皇帝から直々に、脅迫まがいの命令を受けているのか。
 従うしかないのだろうが。

 情けは人のためならずか、偶然見つけた指輪を持ち主に返したら、この宿屋(トレードハウスとここではいうらしいが)に便宜を図ってくれたため、しばらくはここでゆっくりできる。
 治癒の効果を持つ指輪。魔法を使いづらくなっている私にとっては価値のある物ではあったけど、家に伝わる宝であるなら返してあげるべきだと思った。ぱっとしない幸薄そうな男でもあったし。

 さて、バルモラまでの行き方を尋ねるために、斥候のエローネという人にこれから話しかけようと思う。
 ちょうど、別の客との話が終わったようだし。





 エローネは見知らぬ私に対しても親切にバルモラまでの道順を教えてくれた。
 が、道程を考えるに、途中でペラギアド(Pelagiad)という町で休息ができそうだとはいえ、体力が落ちている私ではバルモラまで徒歩で行くのはリスクが高いだろう。
 わずかな所持金がさらに減るが、シルト・ストライダーという交通手段を用いてバルモラまで運んでもらうのが一番だと思う。

 次の便は一時間もしない内にあるそうだ。ここに留まっていても仕方がないし、すぐに向かうことにしよう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜
後書き

 ずっと小説調で書けたらいいのですが、それではちょっと大変なので、ヴェナサの手記の形式も織り交ぜながらプレイ記録を書いていきたいと思います。
 なお、これはゲームのプレイ記録ですが、話の都合のため、一部ゲーム内容と異なる部分が生じることもあります。ご了承ください。

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