【モーンホールドにて】
夜のモーンホールドにて、リヴィーネは困っていた。
歩きながらちらりと後ろを振り向くと、茶色い体毛をした可愛らしいキツネがその視線を喜ぶように駆ける速さを上げ、リヴィーネとの距離を縮めてくる。
引き離そうとして小走りになると、キツネは哀れを誘う鳴き声をあげながら、それでも必死にリヴィーネからはぐれまいとついて来る。
港の辺りでどうも奇妙なものに好かれてしまったようだ、とリヴィーネは歩くスピードを緩めながら考えた。
キツネはモロウウィンドに野生で生息してはいない。他地方からの輸送船に紛れ込んできたのか、それともアカデミーかどこかのペットだったものが逃げ出したのか。
道行く人が好奇の視線を向けてくることは気にしなかったが、もしこのキツネをついて来させるとしたら、一つ問題がある。
そのために彼女は、キツネをついて来るに任せて、グアルを預けている厩に向かっているのだ。
厩に到着すると、リヴィーネは自分のグアルにすぐに歩み寄った。
「リシー、元気にしていたかしら」
主人が現れ、嬉しそうに擦り寄るグアルを撫でながら、リヴィーネは横目でキツネの出方を伺った。グアルに驚いて逃げ出したならそれで済ませようと思っていたのだが、予想を裏切り、キツネはリシーの逞しい足元とリヴィーネのほっそりとした足元の間を駆け回っている。
リシーも小さな生物に興味を示し、頭を屈めて不思議そうにキツネを眺めた。
「……仲良くできるなら、ついて来てもいいよ」
はしゃぐ一頭と一匹を見ながら、リヴィーネはキツネの名前を何にしようか考えることにした。
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後書き
その可愛さに負けて、クラウンストアでペットのキツネを買いました。
これからはほぼずっと連れまわすことになるかと思いますので、よろしくお願いします。
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